今日は、屋根の寿命(耐用年数)とメンテナンス周期についてのお話です。
実は、少し前にUPしました[スレート屋根とその塗装時期について]の記事を書くに当たり、事前にある程度の情報を収集しておこうと思いまして、ザッとWEBで検索していたみたのですが・・・
様々な情報が入り乱れていることにも驚いたのですが、リフォーム系のサイトさんのあまりの多さにだいぶ引いてしまいました。😲💦
ここでは、建築士的な観点に基づいて考えていきますので、建築士的な主観にはなってしまうのですが、大きく分けて3種類、細かくは6種類の屋根葺き材について、なるべく客観的な情報となるよう、この屋根材の寿命、つまり耐用年数と、その耐用年数を迎えるために必要なメンテナンス周期について、一般的な年数は何年なんだ?という観点で考えていきます。🤗
現実的には気候条件や勾配などで変わってきてしまい、ケースバイケースになりますので、あくまでも「一般的な年数」というお話になります事、予めご了解頂ければと思います。
屋根葺き材の種類
色々な屋根葺き材が存在しますが、一般的な住宅などの木造建築に用いられている、屋根の種類としては、大きく分けますと、スレート屋根/瓦屋根/金属屋根の三種類になります。
実際には、周知の通りいわゆる三角屋根ではない、例えば「陸屋根」なども存在しまして、この場合は名称としては「屋根」であることに違いはないのですが、一般的には「防水」と呼ばれる工種になりますので、この「防水」については今回は除きます。
※「陸屋根」はビル系建物にみられる平らな屋根です。
ここでは、この三種類の屋根材について、予備知識として、それぞれの概要と、寿命(耐用年数)やメンテナンス周期について、筆者の主観的な所見を元に、ザッとご紹介しておくことにします。
スレート屋根
最近は木造住宅などの建物では、最もポピュラーな屋根葺き材のひとつが、このスレート屋根です。
既述の通り、「カラーベスト」や「コロニアル」などと呼ばれることが多く、体裁とか性能というより、どちらかと言うと、コストの面から採用されるケースが多いように思います。
最近は耐候性の高い製品もあるようですので、一概には言えないのですが、最近の製品の場合、適切なメンテナンスを定期的にしてれば、メーカーさんの謡で言うと、耐用年数としては30年ほどとのこと。
一般的に言われているメンテナンス周期としては、お手頃なスタンダード品で最近のモノの場合ですと、これもメーカーさんの謡によれば、10年以内に一度は必要・・・とされています。🤨
ちなみに、「スレート屋根/コロニアル/カラーベスト」の関係を整理しますと、スレート屋根の内、とあるメーカーさんが製造したシリーズが「カラーベストシリーズ」。
その内の商品名が「コロニアル」になりますので、3つが同義語という訳ではありません。☝
また、話のニュアンスは逸れるのですが・・・
2005年以降の製品については問題ないのですが、2004年以前に製造されたスレート屋根材の場合、アスベストを含むものもありますので、屋根塗装を施工する際も含めて、屋根リフォームの際には注意が必要になります。☝
このスレート屋根については、別の投稿でも詳しく書いていますので、お時間が許されるようでしたら、こちら👉[スレート屋根とその塗装時期について]の方も、ぜひお立ち寄り頂ければと思います。😌
瓦屋根
瓦屋根は大きく分けると、粘土系瓦/セメント系瓦の二つに分けられます。
スレート屋根と比べると、いずれの場合もお高くついてしまうのですが、セメント系瓦は比較的お手頃系の製品もある中、粘土瓦は昔ながらの「瓦」ですので、周知のとおり、現代においてはお安くはないですよね?😞
セメント系瓦については、色んなデザインがありまして、いわゆる洋瓦チックで一見お洒落でステキ😍な感じのものも多く販売されていますので、使われていらっしゃる方も多いものと思います。
※さらに細かく分けるとセメント瓦とモニエル瓦等に分かれます。
屋根材としての耐用年数、メンテナンス周期は共に、スレート屋根と比べれば、やや長めの印象ですが、塗膜が切れるとスレート屋根同様に芳しくない状態になります。
また、重量が重くなりますので、耐震性の観点からはやや劣るという感じでしょうか。🤨
※コストも当たり前にやや高めということになります。
粘土系瓦については、さらに大きく二つに分かれまして、釉(うわぐすり)が掛かっていない「素焼き瓦」と、釉の掛かった「陶器瓦」の二通りになります。
粘土瓦を使うケースは筆者の設計レベルですと、非常に少なく・・・、確か2/400ほどしかなかったと思います。
ですので、正直なところ、あまり詳しくはないのですが、重さはセメント系瓦よりはやや重く、耐用年数としましては「素焼き瓦」が1.5倍ほど、「陶器瓦」が2.0倍ほど・・・というイメージです。
お高いという意味で、圧倒的な安定感がありそうな気もしていたのですが・・・、
つい先日の2020年台風10号の九州の被害で見ますと、瓦を飛ばされたお宅が相当数に上っていますので、特に陶器瓦はメンテナンスフリー的な印象もあるとは言え、やっぱり油断はできないんだな・・・😰と思った次第です。
粘土系瓦の場合、金物などを使わず、漆喰を使って納めるのですが、その漆喰のメンテは10年以内くらいには必要なそうですので、不幸にもメンテナンスが追いついていらっしゃらなかったお宅の被害が多いのかもしれません。😞
この場を借りまして、被害に遭われた方々に、心からお見舞い申し上げたく思います。😔
昨年の台風騒ぎ以降、本業の隙を見つけて、災害の被害調査にも参加していますので、特に縁の遠かった粘土瓦に対する知識も深まりつつあるところです。😉
あと、瓦にまつわる経験談としましては、25年ほど前、古い住宅(瓦屋根)のリフォームの際、冒頭でお話したズルっと話と似たような経験がありまして・・・
当時の記憶によると、築35年だと聞いたと思うのですが、若かりし筆者が屋根に上って作業をしようとした際、すでに割れていた瓦に足を取られて、ズルっといってバランスを崩して・・・
2mほど離れた足場に激突することで、地面への落下は免れ、命拾いした経験があります。😅
若かりし頃ですので、屋根上の作業をもナメきっていたせいもあるのですが、今思うと、純和風のお宅だったので粘土系瓦だったはずなのですが、たかが35年でそこら中が割れ捲って(まくって)いましたので、今ひとつ腑に落ちません。🤨
鉄板屋根
鉄板系の屋根も、色々とありますが、基材となる鉄板の種類によって、主要なモノは大きく2つに分けることができます。
ひとつは昔ながらの「トタン屋根」、もう一つは最近ハヤっている「ガルバリウム鋼板屋根」です。
※銅板やステンレス等もありますが今回は除きます。
いずれも、先のスレート屋根よりも軽くなりますので、耐震性の観点からはメリットがあるのですが、昔ながらのトタン屋根は、耐久性の面からか、現代ではあまり採用されることが少なくなりました。😥
代わりに、25~30年ほど前から使われ始め、15年ほど前から急激に伸びてきていると思われる「ガルバリウム鋼板屋根」は耐用年数も抜群なのですが・・・
残念ながら、現段階ではまだお安くはなりにくい屋根材ですので、筆者のような一般庶民には中々手が届かないですよね。😢
一部の裕福な方々のお宅でしか使われることがなく、そこまで広くは浸透していない印象です。
ガルバリウム鋼板のメッキの構成としましては、確か・・・
亜鉛が43.4%、アルミが55%、そこにシリコンが1.6%だったと思います。
この組成が耐用年数を高めている訳ですが、鋼板としての耐用年数は、トタンに比べて非常に長く、一般的には「5倍ほど」と言われていますが、既述の通り、お手頃価格とは言いがたいお値段ですので、面積が多くなりがちな屋根では中々見られないのですが、水切りや見切り系の板金などは、昨今はこのガルバリウム鋼板が使われることが一般的になってきている気がします。
※要するに細長くて面積を食わないモノ。
あくまでも筆者のイメージですが、屋根材としての耐用年数は、「トタン屋根」が15~20年ほど、「ガルバリウム鋼板屋根」が30~40年ほどの印象。
同じく、屋根材としてのメンテナンス周期としては、「トタン屋根」が7年以内、「ガルバリウム鋼板屋根」が15~20年ほどのイメージです。
一般的な寿命とメンテナンス周期
筆者のつたない40年ほどの経験から来ている、勝手なイメージは前項でお話してきた通りなのですが、では実際に世間で一般的に言われている、屋根の寿命(耐用年数)とメンテナンス周期はどのくらいなんだろう?という観点のお話に入っていきます。
一般的な年数を決める方法
そう言えば建築士試験のテキストとかに書いてあるかも!と思って、本棚をアサってみたのですが、さすがに25年以上前の話ですので、テキスト自体が見つからず・・・ 😓
手持ちの専門書には、当たり前にそんな話は書いてあるはずもなく・・・
結局、WEB情報を利用することにしたのですが・・・
実際にWEBで調べてみますと、皆さん(リフォーム屋さん達)が、あまりに色んな数値を掲載しているので、整理しようとしていたのに、何だか訳が分からなくなってしまいました。🥴
・・・だからといって、建築士として、筆者まで主観だけのお話しで終わらせてしまうわけにもいきませんし、どなたかの書かれた数字をもっともらしく採用する訳にもいきませんので・・・
最終的に!各リフォーム屋さんがWEB上で掲載している、耐用年数とメンテナンス周期の平均の数値を取ってみることにしました。😅
平均値をとることで、統計学的に考えれば、少なくとも客観的な数値に近づくはずですよね!😚
具体的な年数の抽出とその結果
とは言え、ザッと見る限り、明確な数値までを掲載してくれているサイトは、意外と少なく・・・
検索で引っ掛かる上位2ページ目くらいまでで、あとは抽象的な感じが多くなってしまいましたので、この上位2ページ目ほどの中から、前項までで区分した大きく分けて三種類、細かく分けて六つの屋根の種類について、記載のあるサイトさんの数値を抽出し、平均値を取ってみます。
もう少し件数が多いとよりリアリティが増すような気もしつつなのですが、何10ページもチェックするのもさすがに厳しい状況ですので・・・ 😞
ちなみに、多いもので12~15件分くらいの平均値になっています。
いきなりですが、集計結果は、以下のようになりました。🤗
葺き材区分 | 耐用年数 | メンテ周期 |
スレート屋根(カラーベスト) | 19~28年 | 10~11年 |
セメント系瓦 | 28~33年 | 13~18年 |
素焼き瓦(粘土系) | 50~63年 | 30~40年 |
陶器瓦(粘土系) | 67~82年 | 43~55年 |
トタン屋根(カラー鋼板) | 12~20年 | 9~12年 |
ガルバリウム鋼板屋根 | 24~35年 | 19~25年 |
実際にこれらの数値が「一般的」な数値になるのかどうかは微妙なのですが、少なくとも客観的な数値に近いものにはなるものと思います。👌
ちなみに、リフォーム系サイトさんの数値ということで、やや短めに書かれている可能性もありますので、算出された数値の小数点以下は切り上げて計上しています。
個人的には、概ねイメージ通りの数値にまとまった気がしますので、結果の数値としては悪くない数値が導き出せているはずです。👍
なお・・・
あくまでも屋根材自体の耐用年数とメンテナンス周期ですので、下地などのメンテナンス周期や耐用年数は考慮されていない年数になります。☝
つまり例えば、トタン屋根(カラーベスト)などの場合は、下地に「ルーフィング」という防水シート的なモノが敷かれるのですが、この耐用年数は20年ほどと言われていますし、既述の通り、粘土系瓦の漆喰なんかは10年くらいでメンテナンスが必要になってきたりします。
・・・が、そのような付帯部材の耐用年数などは考慮されていない数字になりますので、屋根自体のメンテンナンス周期や耐用年数とは、ややニュアンスが逸れますので、この点についてはくれぐれもご注意願えればと思います。 😉
具体的なメンテナンス方法や屋根リフォームの方法については、別の投稿でまとめるつもりですが、大変恐縮なのですが、いつ頃になるかはお約束できませんので、期待されることなく、気長にお待ち頂けると有難く思います。🙍
今日のまとめ
今日は、ちょっと中途半端な感じになってしまいましたが、屋根種類ごとの寿命、つまり耐用年数と、その耐用年数を無事に迎えるために必要なメンテナンス周期について、一般的に言われる年数は何年なんだ?という観点で考えてきました。
一般的な年数を求めるため、WEB上に掲載されている屋根材の寿命(耐用年数)とメンテナンス周期(メンテナンス時期)の平均値を求めてみた訳ですが、客観的な年数に近い数字にはなっているとしても、ここで掲載した年数も、残念ながら絶対的な数字ではなく、参考値にすぎません。
実際には、ここで掲載した年数などをご参考にして頂いた上で、ご自身の目で屋根の状態を確認しながら、ご自身の判断の元、必要に応じて、メンテナンスをして頂くしかないと思います。
メンテナンス工事まで、DIYですることを推奨している訳ではありません。☝
必要に応じて、信頼できる専門の業者さんにお願いするのが賢明かと思います。
また、このブログはリフォーム屋さん系ではありませんので、急かし立てるつもりもありませんし、脅すつもりも全然ないのですが、少なからずひとつ言えることは・・・
屋根に限った話ではないのですが、特に、風雨から家族を守るという重要な役割を持つ屋根ですので、屋根材(屋根葺き材)を健全な状態に保つよう心掛けて、タイミングを見極め、適切なメンテナンスを行うことで、建物自体の耐用年数を高めることに繋がることは間違いありませんし、最終的には資産価値も維持できることになるはずです。
ぜひ、適切で健全なメンテナンスを心掛けて頂ければと思います。😊
毎度のことながら、例によって的を得ず、長くなってしまいましたが、
最後までお読みいただき、どうも有難うございました。🙏
コメント