今日は、年始早々ちょっとマニアックかも知れないのですが、「腰窓」について考えます。🙋♂️
他の投稿でもザッと触れたところではあるのですが、今一度この「腰窓」とは何たるか?を、改めて、徹底的に見直してみよう、という試みです。😁
そもそも腰窓とは何ぞや?という点から、腰窓の定義や位置付け、メリットやデメリットを洗い出して、腰窓の持つポテンシャルについて、客観的に検証し、考察していく内容になります。
検証と考察は長くなってしまいましたので、別の投稿「腰窓のメリットを検証してみました!」に切り分けました。
何だか堅っ苦しい感じに聞こえるかもしれませんが・・・ 😅
単純に、この「腰窓」とは、客観的に見てどういう窓なんだ?という観点のお話の完全版です。👍
腰窓の基本事項
「腰窓」とは、一言でいうと「腰壁のある窓」です。☝
腰壁は、要するに腰高の壁ということになりますので、その腰高の壁の上に載っている窓を「腰窓」と呼んでいます。
「腰窓」の読み方は、難しく考えずに、そのまま読んで「こしまど」になります。😮
英語だと、単純に「Window」になるはずです。
腰窓の定義について
製品名や形式の名称でもありませんで、ただの「呼称」ですから、明確な定義はありません。😑
ちなみに、不親切で申し訳ないのですが、もちろん建築基準法にも「腰窓」の定義なんぞはありません。😑
住宅建築専門用語辞典さんサイトに拠りますと・・・
腰窓とは、壁面の中ほどから上、ほぼ腰の高さにある窓。
住宅建築専門用語辞典 | 腰窓 とは (what-myhome.net)
とのこと。🤨
※詳細については後述します。😉
そもそも、この「腰窓」は、世の中ではどのように認識されてるんだろう?😮
ということで、色々とWEBで嗅ぎまわってみたのですが、特に気になる記事も見つからず、「腰高窓」と呼ばれることもある・・・程度しか分かりませんでした。💧
SUUMOさんやホームズさんは、「腰高窓」との表現がありましたので、我々の業界(建築業界)では「腰窓」を「腰高窓」とは呼ぶことはほとんどないのですが、不動産業界ではそう呼ぶ場合もあるのかもしれませんね。🤔
腰窓の腰(腰壁)の高さ
では、まず最初に、この「腰窓」を定義付けることになりそうな「腰高」とは、一体いくつ位の高さなのか?という点に着目してみます。☝
一般的な日本語では?ということで、ザッと調べてはみたのですが、そもそも日本語としては、あまりこういう使い方はされていないのか・・・ 😟💧
中々根拠となりそうな情報は見つからず、最終的に行き着いた「国語辞典オンライン」というサイトさんでは、この「腰高」という日本語に対し、4つの意味が掲示されておりまして、4つ目の意味で、以下👇のように書かれておりました。😳
腰板の高さが六十センチメートル程度の障子。「腰高障子」の略称。
https://kokugo.jitenon.jp/word/p17559
建築業界にいながら、この定義は初めて聞きましたし、いわゆる「障子(しょうじ)」が採用されること自体が、ほぼなくなってしまったこともあって、全然つながっていなかったのですが・・・
そう言えば、この「腰高障子」に似た「腰付障子」という言葉も古くから存在はするようですので、この辺りを語源として、「腰窓」と呼ばれるようになったのかな・・・、などと推測することはできます。🤔
この「腰高障子」と「腰付障子」については、W-Walletさんの「障子(しょうじ)」ページに分かりやすく書かれていますので、ご興味のある方はご覧になってみてください。😉
前掲の「国語辞典オンライン」さんで「60cm」とされている部分が、「80cm」とされていたりしますので、「腰高」という日本語の定義に直接的に繋がる情報ではないのですが。😅
前掲の住宅建築専門用語辞典さんの「腰窓」の定義によると、「壁面の中ほどから上」とのことでしたので、一般的な天井高が2400mm(2.4m)と考えますと、腰壁高が「1200mm」ほどから上ということになってしまいますので、筆者の認識ともややズレがあります。🤨
とあるお客さんのお宅の図面を使って、具体的に見ていきます。🧐
以下👇は「展開図」と呼ばれる図面になりまして、室内から各壁面を見た平面(立面)的な図面になります。
これも後述しますが、左側はいわゆる「掃き出し窓」、右側が紛れもない「腰窓」です。
左側に押入れがあったり、エアコンの位置や給気口が描いてあったりしますが、ここでは関係ありませんので、無視してください。😅
ここに掲載するために、少し手を入れていますので、厳密にはお客さんのお宅の図面とは違いますから、個人情報とかは問題ありません!
腰壁の高さは900mm、腰窓のサッシ高さとしては1100mm。
・・・なのですが、これは100%、腰窓と呼ばれる窓になります。😲
ちなみに、2Fのお部屋だとしますと、腰壁が900mmの高さしかないと、ちょっと危ないですから、2Fの腰窓の場合は、腰壁を1100mmとして、サッシ高を900mmにしたりします。
※腰壁が1100であっても「腰壁」は「腰壁」です。
たまたま、このお客さんのお宅の天井高は2500mm(2.5m)でしたので、少々紛らわしいのですが、標準的な天井高は、既述の通り、2400mm(2.4m)が基本です。
天井高については、居室の最低天井高が2100ということで、建築基準法で下限が定められていますが、それ以外は特殊な天井高の規定を除き、特に決まりはありません。
では、この絵👇だと、どうでしょうか?
先ほどの図面に少し手を加えて、わざと紛らわしくしてみたのですが・・・。😅
左は高さ1800mmで大きめの窓ではあるのですが、200mm(20cm)の腰壁がある状態です。
この絵は1Fの絵ですが、仮に2Fの絵だとしたら、「掃き出し窓」と呼ばれるケースが多くなりますが、正確に言うと「ちょっと腰のある掃出し窓」が正解です。
「掃き出しみたいな大きい腰窓」という表現でも、正解と言えば正解なのですが、おそらく、ちょっと通じにくいかな、と思います。🤨
では、右側については、腰壁高が500mmしかありませんが、これは腰窓はないでしょうかね・・・😕
確かに「ひじ掛け窓」などという用語も存在しますので、ひとことで「腰窓」と言っても通じないかもしれませんが、「腰の低い腰窓」で大丈夫です。👌
逆に「ひじ掛け窓」の方が、定義が曖昧な気がしますので、個人的には「腰の低い腰窓」と呼ぶ方が適切と考えます。☝
1000歩譲ったとしても、「腰の高い掃き出し窓」とはなりませんので、紛らわしくって申し訳ないのですが、少し注意が必要かもしれません。😕
これがさらに低くなって、腰壁高が300mmになったりすると、線引きが怪しくなってきてしまうのですが、2Fでバルコニーがある部分のこんな👇窓だとすれば、「掃き出し窓」と呼ぶ方もいらっしゃいます。🤨
※特に不動産系の方に多い印象です。
個人的には、「腰が300mm(30cm)の掃き出しみたいな腰窓」が正解だと思いますので、口答で伝える必要がある場合は、このように表現するようにしています。
※口答だと「掃き出し窓」では正しく伝わらないためです。☝
腰窓の分類
何とも抽象的で申し訳ないのですが、筆者の経験値からくる主観では、「腰窓」の一般的な認識のされ方としては、この👆ような感じになる訳ですが、今度は、もう少し客観的な観点からみてみます。
「腰窓」が、以下の二通りの分類の中で、それぞれどんな位置づけになるか?という視点のお話になります。
取り付け箇所による腰窓の分類
例えば、「腰窓」と並列してよく使われるのが、皆さんもご存じのことと思われる、前項でも少し触れた「掃き出し窓」です。
※分類の「呼称」として並列できるという意味です。
他に並列できる「呼称」を挙げますと、「地窓」や「高窓」、「天窓」などがありますので、要するに、取り付ける高さによる分類、もしくは取り付ける箇所による分類ということになると思います。🤔
「天窓」については、おそらく皆さんのご認識で食い違いはないと思うのですが、いわゆる「トップライト」ですね。
天井面に付くこんな👇タイプ。
もちろん、二連である必要はなく、開く必要もありません。
単窓で開閉なしの嵌め殺しタイプで、単なる明かり採りであっても、天井に付いていれば「天窓」です。☝
「地窓」と「高窓」については、やや馴染みが薄いかも知れませんので、図でご説明しますと、以下のような形の窓になります。
「地窓」は床スレスレに取り付くモノ、「高窓」は単純に高い位置につく窓を指します。
個人的には、この「高窓」も「腰窓」の一種と考えた方がスッキリするような気がします。
いくつくらいの腰壁高があると「高窓」になるのか?と言われると、これも困ってしまうのですが、腰壁高が目線を超える1500mmくらいになってくると、「高窓」と呼ばれている場合が多いです。
ここでも、わざと紛らわしい絵に調整してみますと、例えば以下👇のような感じ。
右側は「高窓」で通じますが、一般の建物の場合、窓の上端の高さは2mの高さで揃えられますので、それを超えた高い窓という意味で、「天井面スレスレの高窓」という表現が適切です。
左側については、自分で描いておいて何なのですが・・・
だいぶ微妙です。😓
少なくとも「地窓」ではありませんので、おそらく「地窓みたいな低めの腰窓」という表現になるのかな、と思います。
ちょっと微妙すぎましたね?😅 失礼しました。😌
サッシ分類上の腰窓?
腰壁の上に載っていれば、基本的に「腰窓」ということで間違いはないのですが、サッシ分類上はどのような位置付けになるのか?という点について見てみます。
もちろん、サッシ分類上も「腰窓」という用語は存在しません。☝
あくまでも引違い窓の場合にはなるのですが、LIXILさんの引違いサッシのカタログページを参照すると、以下👇のようになっています。
※赤字や赤線は筆者が書き込んだコメントです。
細かい部分については、論点がズレますので割愛しますが、引違いサッシの場合、いわゆる掃き出し形式で使用されることが想定された「テラス」タイプと、掃き出し形式ではないその他の「マド」タイプという二通りに分かれます。
内法での高さ1500と1800の間にこの線引きがあり、内法での高さ1500以下のサッシについて「マド」、内法での高さ1800以上のサッシについて「テラス」ということで振り分けられておりまして、
全てのメーカーで同じかどうかまでは把握できていないのですが、基本的にどこのメーカーさんでも同じ分け方になるはずです。
何をお伝えしたいのかと言いますと、図中👆に赤でコメントを入れた通り、上段の「マド」に区分されている高さのサッシについて「腰窓」、下段の「テラス」に区分されているものについて「掃き出し窓」と表現される場合もある、という点です。☝
ちなみに、この「テラス/マド」については、形状としては大きな違いがある訳ではありません。
細かい話はどうでもいいかな🙄・・・という気もしつつ、今一度、LIXILさんのカタログに戻って、断面図を見てみますと、「マド」に分類されるサッシは、以下👇のような断面形状になりまして・・・
※木造の軸組み工法用の引違いサッシです。
もう一つの「テラス」タイプに分類されるサッシの断面図は以下👇です。
馴染みの薄い図だと思いますし、画像が悪くて認識しにくいかもしれないのですが、サッシの足元付近の形状が、やや違うくらいで、ほぼ同じ形状です。
ただ、「マド」の場合は腰壁が付くことを前提とした形状、「テラス」は床に取り付けられることを前提とした形状にはなっていますので、この点がやや違います。
あとは、高さ寸法の押さえ方が違うくらいですので、大きな違いはありません。
腰壁が付くことを前提とした形状になっているため、「腰窓」として使われることが想像できますが、実際には、前項でご紹介した「地窓」や「高窓」としても用いられることも、往々にしてありますので、「マド」=「腰窓」だ!とは言えない点が、逆に紛らわしいかもしれませんね。😓
腰窓の種類
腰窓の種類となりますと、要するに「腰壁のある窓」ですので、種類は窓形式分あることになりますので、例えば、引違い窓、滑り出し窓、上げ下げ窓、嵌め殺し窓・・・など、さすがに無限にはありませんが、とにかく沢山あります。
ほぼ全てのサッシ製品が腰窓に対応できる形になっていますので、「腰窓の種類」と言ってしまうと、その数だけ存在することになります。
この写真👆でいうと、左が「引違いの腰窓」、右が「上げ下げの腰窓」ということになります。
ちなみにこの部分は2Fですので、腰壁高は1100mm、腰窓高(サッシ高)は左が700mm、右が900mmになっています。
例えば、掃き出し窓形式の大きな形状の製品自体が存在しない、上下げ窓や滑り出し窓などの小窓系については、敢えて「腰窓」と伝えなくても、誰もが「腰窓」と考えます。
・・・ので、逆に言うと、そんなことはそうそうないと思いますが、小窓系の窓を敢えて床スレスレに付けたい場合は、その旨を伝えないと、行き違いが生じてしまいますので、注意が必要かもしれません。
例えば、いわゆる出窓のような形式も、腰壁がありますから、腰窓の一種とお考えいただいていいと思います。
色んな会社が色んなルールで呼び方を勝手に決めているので、なおさら紛らわしくなってしまうんですよね・・・
何かビシッとした定義があれば分かりやすいのですが。😟💧
ですので、曖昧な分、逆に日本語に忠実に考えていくしかないような気がしますね。😑
腰窓のメリット/デメリット
腰窓のメリット/デメリットは何でしょうか?
筆者は個人的に、小窓はやむを得ないとしても、引違い窓については、なるべく腰窓は避けて、外部との連続性や開放感を確保することで、広くはない室内を少しでも広く見せたいタイプの設計屋ですので、お客さんから特別な要望がない限り、掃き出し窓で計画してしまいます。😅
そんな筆者なのですが、腰窓のメリット/デメリットについて、具体的に考えてみました。😁
腰窓のメリット
いきなりニュアンスが逸れますが、この👇写真のリビングは素敵ですよね?
リクシルさんのカタログからの引用なのですが、このような腰窓の使い方ができれば、開放感も損なわずに済む気がします。🙂
ロケーションもよさそうですが、実に素敵です!👏
念のためですが、「ステキ」なのは、建築的にではなく、絵的にです。
実際には風通しなど色んなことを考えると、正面のFIX窓(嵌め殺し窓)は開閉できるものであった方が機能的でしょうし・・・
←よくよく見たら、開閉できるタイプのようです。🤩
本論に戻します。👊
主観的で恐縮なのですが、腰窓のメリットについて、一般的に言われているモノも含めて、現状で思いつく項目を挙げてみましたら、以下のようになりました。😉
※腰窓の大きさにも拠りますが・・・
- 防犯上、抑制力が上がる。面格子が付けられる。
- サッシ価格としては、掃き出し窓よりは安い。
- 熱効率が、掃き出し窓より上がるのでエコ。
- 腰壁があることより、窓から落下の可能性が低い。
- 腰壁分が使えるので家具の配置がしやすい。
4~5については、覆しようのない事実ですので、改めてどうこう言うつもりもなく、腰窓嫌いの筆者でも、素直に認めるしかありませんよね。😅
1~3については、一部は事実も含まれるのですが、総合的に見て本当にそうなのか?を確かめる必要がありましたので、この三点については、具体的に細かく検証してみました。🧐
検証結果詳細については、長くなってしまったため、別の投稿「腰窓のメリットを検証してみました!」に切り分けさせて頂きましたので、ここでは概要だけ以下👇にまとめておきます。
- 1)腰窓の防犯性能について
正直なところ、さほど大きな違いはないイメージだったのですが、改めて検証してみると、筆者的にはだいぶ驚く結果になりました。😨
詳細は補足記事の👉 この辺り - 2)腰窓のコスト面について
サッシ価格としては安くなりますし、カーテン代も安く済むのですが、工事費としてのトータルコストで考えると、サッシや外壁の仕様にも大いに影響を受けるのですが、おそらくあんまり変わりません。🙁
詳細は補足記事の👉 この辺り - 3)腰窓の熱効率について
昨今、省エネばやりですので、これについても、検証してみた結果、本業の方で常々、省エネ法の届出対応はしてきたものの、内容に深く踏み入ることがなかったこともあって、腰窓の思わぬ優秀さが浮き彫りになりました。🥶
詳細は補足記事の👉 この辺り
腰窓のデメリット
書きながら、メリットばっかりだなぁ😨!と思ってしまいましたが、意外とデメリットが見つかりませんで、強いて言うと、以下の三点でしょうか・・・
- 閉鎖的な空間になりがち。(採光・通風含む)
- 外部との出入りがしにくい。
- 引越しの時などに搬入口として使えない。
筆者としては、先の通り、とにかく空間を広く見せることに重点を置いていましたので、腰窓は嫌っていたのですが、意外と短所が少ないことに初めて気づきました。🤨
腰窓も意外と侮れない(あなどれない)のかも知れません・・・ 😓
今日のまとめ
本日は、腰窓とは何ぞや?という点について、長所短所や定義を含めて、この腰窓の持つポテンシャルについて、視点を変えながら、改めて掘り下げ、考察して参りました。
腰窓嫌いの筆者ではありましたが、意外とメリットが多く、デメリットが少ないことに気づいたりして、ちょっと考えさせられる結果となりました。😅
ただ、そうは言っても、筆者はやっぱり、この狭い日本という国土の中で、密度が高すぎる首都圏において建物を設計する以上は、広くはない空間を、少しでも広く、さらに有効に使えるよう最善を尽くしたい気持ちに変わりはありません。😤
事実は事実として認めつつも、できることなら、腰窓よりも掃き出し窓を優先して採用していきたい・・・という意味です。😄
・・・とは言え、補足記事の方で見てきた、特に、防犯性や省エネ性能についてを無視するわけにはいかないことは、痛感し認識しましたので、今後の設計活動に生かしていきたく思います。😅
だいぶ長くなってしまって、申し訳ございませんでしたが・・・😞
年始早々、下らない話に最後までお付き合いいただきまして、どうも有難うございました。🙂
[P.S.]
年末より、Adsense広告が表示されるようになりましたので、少々見にくい場面もあるかと思いますが、本年も、引続きご愛顧のほど、どうぞ宣くお願い致します。🙏
2021年1月4日
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