用語解説ということで、「柱芯とは?」と、「壁芯とは?」という解説を書いているところでしたが、不動産関係の書類などで見かける「壁芯」という表記について、論点が逸れてしまう割に長くなってしまいましたので、ここに切り分けて、改めて補足させて頂きます。😉
不動産用語の「壁芯」について
筆者は建築士ですので、不動産については専門外ではあるのですが・・・ 😓
ちょうど建築でいう「壁芯」や「柱芯」などの概念を整理していたところでしたので、関連性のある、不動産用語としての「壁芯」について、主に建築基準法との兼ね合いという観点で、把握できている範囲でご説明しようと思います。
不動産用語の「壁芯」の読み方
まず、基本事項の確認ということで、不動産書類などで見かける「壁芯」の読み方からです。☝
「壁芯」の読み方としましては、不動産用語としては「へきしん」もしくは「かべしん」と読みます。
建築ではおそらく「へきしん」では通じませんので、「かべしん」と読んでいただいた方が無難です。😉
※少なくとも筆者は40年間、聞いたことがありませんので。
不動産用語の「壁芯」と建築での「面積」の違い
まず、建築基準法での面積算定は、原則として「区画の中心線」と呼ばれる仮想線で囲われた範囲を、「面積」として算出します。
建築業界においては、「通り芯」という用語が存在しまして、通常の場合、ここでいう「区画の中心線」と呼ばれる仮想線が、この「通り芯」と一致することになります。
※違う場合もありますが、フツーは一致します。
図面上では、認識しづらいかもしれませんが、一点鎖線で表記されている基準線です。
不動産での建物関係面積も、基本的にこの建築基準法の考え方で算定されまして、これを、不動産用語では「壁芯」や「壁芯面積」と称して区別する場合があります。
ちなみに、この場合の不動産用語としての「壁芯」は、先ほどの建築基準法でいう「区画の中心線」と呼ばれる仮想線と一致することになります。
※通り芯とも一致するということですね。
不動産用語の「壁芯面積」と区別される面積
不動産では、先の「壁芯」による一般的な「面積」とは別に、登記の場合に使われる「内法面積」という別の概念が存在します。
これは、マンションなどの区分所有の面積のみについて採用される、不動産登記法における別の概念によるもので、登記書類などの不動産関連の書類上では、この「内法面積」による、ニュアンスの違う面積が記載されている場合があるため注意が必要です。☝
要するに、マンションなどの区分所有の面積についてのみ、先の通り「内法面積」ということになっているため、登記法上の数値記載箇所だけは、壁厚や柱の出っ張りなどの厚みまでを考慮した(差し引かれた)数値が、「面積」として記載されることになるためです。
この図👆で言いますと、左が建築基準法でいう「面積」、右が不動産登記法でいう区分所有の場合の「面積」をイメージしていますが、それぞれ、赤線が面積の算定ライン、オレンジ色のハッチが面積の範囲を示しています。
※図中の一点鎖線が「区画の中心線」=「通り芯」もしくは「壁芯」です。
結果的に、建築基準法に言う「区画の中心線」で囲われた範囲の面積(=不動産業界的に言う「壁芯面積」の数値)と比べると、少し狭い数字が掲載されることになるということですね。🤔
正確に運用されているのかは、業界が違うため分からないのですが、通常の場合、この不動産登記法上の面積の数値が記載される書面上は、区画の中心線で計測された面積に「壁芯」や「壁芯面積」と記載されるか、登記法上の考えで算出された面積に「内法」や「内法面積」と表記されます。
これについては個人的には紛らわしいなぁ・・とは常々思っている所ですが・・・
要するに、根拠法令間において、この👆ような面積算出の仕方に食い違いが発生することから、建築基準法に言う「区画の中心線」と呼ばれる仮想線を、不動産業界的には「壁芯」と称し、これに囲まれた範囲の面積を「壁芯面積」と呼んだりして区別している・・ということです。
面積の法文で見る「壁芯」と「区画の中心線」と「区画の内側線」
法文を引用しますと、建築基準法に言う、例えば「床面積」という面積については、以下👇のように定義されています。
建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。
建築基準法第二条第一項第三号
同じく建築基準法に言う、「建築面積」という面積については、以下👇のように記述されています。
※建築面積という用語詳細はこちらが参考になります。
建築物の外壁又はこれに変わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。(後略)
建築基準法第二条第一項第二号
不動産業界では、この「壁その他の区画の中心線」を「壁芯」と呼び、「壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」を「壁芯面積」と呼んでいるということです。☝
ちなみに、不動産登記法上は以下のように記載されています。
建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。
不動産登記規則の第百十五条(建物の床面積)
赤字にした括弧書きを除けば、建築基準法と同じ言い回し「壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」が使われていますので、不動産業界においても、原則として「区画の中心線」で囲われた範囲を「面積」と称するところまでは同じなのです。
・・・が、この👆括弧書き内に着目すると「区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線」とありますので、ここが区分所有と呼ばれる、マンションなどの面積の出し方のみを区別して規定していることになりますよね。🤔
要するに、区分所有の場合のみに出てくる「壁その他の区画の内側線」で囲われた面積を、不動産業界では通称「内法面積」と呼んでいるということです。🤔
この「壁その他の区画の内側線」で囲われた面積が、実際に建築基準法の面積からどこまで差し引かれて算出されているのか?という点については、ケースバイケースでしょうし、そもそも専門外につき細かくは把握できていないのですが・・・
いずれにしても、これを不動産登記法上、通称「内法面積」と呼び、その数字が区分所有の場合のみの面積として適用されている現実があるということです。☝
ただ現実的には、マンションであっても、通常は販売図面やパンフレット上では、普通に建築基準法でいう、区画の中心線で囲われた面積が記載されていますので、
この「内法面積」による数字は、原則として、謄本などの登記書類上か、引き渡し関係の書類などにしか出てこないものとお考えいただいて大丈夫です。
今日のまとめ
本日は、不動産用語としても存在する「壁芯」という用語について、本稿に当たる用語解説「柱芯とは?/壁芯とは?」の補足情報として、ご説明して参りました。☝
そもそも建築業界の中では、根拠法文が違うことから、区分所有建物(マンション)を設計する場合であっても、わざわざ「内法面積」まで計算していません。😐
ですので、不動産関係書類の中で、「壁芯」や「壁芯面積」などの記載がない場合については、原則として建築基準法でいう「面積」、つまり「区画の中心線」で囲われた範囲の面積が記載されているものと解して問題ないはずです。
ちなみに、不動産登記法にいう「内法面積」は、不動産屋さんが計算するわけでなく、通常は土地家屋調査士などと呼ばれる方々が計算しているようです。
ただ、登記の際は「内法面積」が出てきますので、引き渡し関係書類や重要事項説明などの一部の書面にのみ、内法面積の数字が記載されている可能性がある・・という点だけご認識しておいて頂ければいいのかな🙄・・と思います。👌
意味わかりますかね?
スミマセン💦、相変わらずの理系脳なもので、逆に混乱させてしまったとしたら申し訳なく思います。🙏
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