アスベスト(石綿)のお話シリーズの第二弾です。
今日は、「アスベスト問題と健康被害」というお話をしようと思います。
前投稿で、奇跡の鉱石と呼ばれ重宝されてきたアスベスト(石綿)とは何者か?という視点でその概要などをお伝えしたところですが、今回は、このアスベスト(石綿)が結果的に引き起こすことになってしまった社会問題や付随する、アスベスト(石綿)による健康被害について整理します。
アスベスト問題の方はまだいいとしても、健康被害については、完全に専門外の分野になりますので、全般的なお話に留まります。
また、個人的な興味による内容になるため、やや偏りがちなものとなる旨、予めご了解いただくと共に、ご容赦願えればと思います。😌
アスベストのお話シリーズ目次
当アスベストのお話シリーズの目次です。
ご興味とお時間ありましたら、以下のリンクより、他のお話の方もご覧いただけると嬉しいです。😌
- 第一弾:アスベスト(石綿)とは?
- 第二弾:アスベスト問題と健康被害 👈今回
- 第三弾:アスベストに係る法律とレベル区分
- 第四弾:アスベスト規制の推移と含有建材
アスベスト(石綿)問題
一言で「アスベスト問題」と言っても、様々な問題があります。
ここでは、諸々のアスベスト問題を後々引き起こすことになる発端となる出来事と、これによって明るみに出てくることになった、付随するアスベスト問題の内、現在の日本国内で見られる問題について見ていこうと思います。
アスベスト(石綿)問題の発端
アスベスト(石綿)を使用した材料を製造・販売して、健康被害が出たことが問題となって、世界で初めて、その製造者責任を追及されたのは、当時、世界有数のアスベスト製造メーカーのひとつであった、米国の「ジョンズ・マンビル社」と言われています。
少し前の投稿[スレート屋根と塗装時期について]のこの辺りでも触れていますが、現代の日本において、一般的な木造建築物の屋根材として、「カラーベスト」や「コロニアル」との呼称で広く普及している「スレート屋根」を最初に開発したのが、このジョンズ・マンビル社です。
創業は1858年。
日本においても「東京興業貿易商会」という代理店を通して、相当量のアスベストを販売していました。
・・・が、アスベスト(石綿)の人体への危険性を認識しながら、見て見ぬふりをして、製造販売を続けてきたとして、責任を追及されることになります。😩
ちなみに、1938年の段階でドイツにおいて、アスベスト(石綿)による肺がん発症の危険性について新聞報道されています。
1964年の段階では、大量のアスベスト(石綿)が人体に有害である旨の論文も発表されているようですので、この辺りから、その危険性を認識できたはず!ということなんだろうと思います。
1973年には製造者責任が認定されたことで、その後、次から次へと同社を対象とした訴訟騒ぎが起きてしまって、その数は数万件にも及ぶことになり・・・
結果的に、追い込まれてしまって、1982年に倒産してしまったそうです。😞
国内では、1970年ころから旧クボタが石綿(アスベスト)を使用した建材を生産し始めています。
※米国での出来事は認識していたはずなのですが・・・
当初は新しい建材だということもあって、中々売れず混迷していたようですが、このジョンズ・マンビル社が追い込まれて倒産してしまう、ちょうど1980年代から急激に伸びて、現代に至るわけですが・・・
2005年6月29日に毎日新聞によって、当時大手機械メーカーだったクボタの、兵庫県尼崎市にあった旧神崎工場という工場の周辺住民に、アスベスト(石綿)による疾患が発生していることを報道されたことが発端となり、アスベスト(石綿)の健康被害の問題が社会的に広まることになりました。
これが、皆さんもお記憶に残っていらっしゃると思われる、通称「クボタショック」とも呼ばれる社会現象です。☝
国内でも、このアスベスト問題を機に色んな法律が改正され捲って(まくって)、簡単に言うと、2012年(H24年)には完全に石綿(アスベスト)を使用した材料が製造できなくなった・・・という流れです。
※1975年(S50年)頃から徐々に規制は厳しくなってはいたのですが。
なお、この「クボタ」は、2003年(H15年)に「松下電工」と住宅外装建材事業部門の事業を合併させて、「クボタ松下電工外装」となり、2010年(H22年)付で、現「KMEW」に社名変更していますので、分かりづらくなりましたが、KMEWさんの一部ということになります。🤔
旧クボタのアスベスト問題についての取り組みについては👉こちら。
※KMEWさんの「石綿問題への対応状況について」ペーです。
その他のアスベスト問題
騒ぎとして認識されている、発端となった国内でのアスベスト問題(石綿問題)は、こんな👆ところだと思うのですが、これを機に、様々なその他の問題が明るみに出て、派生することになり、今現在もその渦中にあると言っても過言ではありません。
例えば、アスベスト(石綿)による健康被害が潜伏期間の関係もあって、今、急激に増加していることも大きな問題ですし、アスベスト(石綿)の国内での輸入量が下降していく1990年頃から40年に当たる、2030年まではこの増加傾向が続くことが目に見えていても、止めることができないという事実も大きなアスベスト問題のひとつです。☝
さらには、日本国内でアスベスト(石綿)による、健康被害に対しての支援を受けられる制度としては、労災と石綿健康被害救済制度がありますが、アスベスト(石綿)疾病と認定されて支給された件数は年間合計で2000件程度なのに対し、実際にアスベスト(石綿)曝露が原因で発症されている方々は、この軽く10倍ほどの20000人ほどもいらっしゃる可能性が高いという事実も、大きなアスベスト問題のひとつではないかな、と個人的には思います。😓
・・・と言っても、実際に申請された数と認定された数を比較しても、片っ端から申請が却下されているような状況にも見えませんので、どういう問題が起きているのかは、筆者のようなただの建築士レベルでは、よく分からないのですが。😩
いずれにしても、このアスベスト問題は、2030年頃を境に収束の方向に傾き始める可能性があるとしても、アスベスト(石綿)の含有0.1wt%規制が入った、2006年から40年後に当たる2045年ほどまでは、避けられない問題なのかもしれません。😞
アスベスト(石綿)の健康被害
完全に専門外の話になってしまいますが・・・😓
アスベスト(石綿)による健康被害の、具体的な疾患(病気)は、石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚などが知られています。
※その他のじん肺症などとは大きく異なる症状となるようです。
一部、別の資料に拠りますと、卵巣がんや咽頭がんもアスベスト(石綿)疾患として、勘定されておりましたので、グローバルな視点で見ていけば、他にもあるのかもしれません。
以下、筆者が気になった、アスベスト健康被害に関する情報についてのご紹介になりますので、少々偏りがあるかも知れません。😅
予めご了解いただくと共に、ご容赦願えればと思います。
中皮腫による死亡者数と潜伏期間
アスベスト(石綿)による疾患として、もっとも代表的な健康被害の一つである、中皮腫に関するとあるデータに着目してみます。
少し古いデータのようで、H29年までのものなのですが、環境再生保全機構さんというサイトに、アスベストの輸入量と、中皮腫による死亡者数の関係を示す、興味深いグラフがありましたので、字が小さくてちょっと読みづらいと思うのですが、以下👇にご紹介します。
緑のベタ塗りがアスベスト輸入量、黄金色の折れ線が、1995年以降の中皮腫によりお亡くなりになられた方の数になります。
まず死亡者数から見てみますと、2017(H29)年まで、年々増加傾向にあるのは一目瞭然で、さらに厚生労働省の「人口動態統計(確定数)」にて、具体的な数字も確認してみますと、1995(H7)年の死亡者数が500人なのに対し、2017(H29)年は、この約3倍に当たる1555人がお亡くなりになられているようですので、うなぎ上りに増えてきてしまっていることが分かります。😞
ちなみに、直近のデータによれば、2018(H30)年は1512人、2019(H31)年は1466人でしたので、やや下降気味で、ちょっと安心しましたが、医学的にはおそらく安心できるような結果ではないのだろうと思います。😓
ただ、この中皮腫による死亡者数は、アスベスト(石綿)による数だけではないという点に注意しなければなりません。
そこで、石綿(アスベスト)の輸入量を重ねてみたのが、先ほど👆のグラフということになるんだろうと思われます。☝
では、緑色の輸入量の方も合わせて見ていきますと、1955年頃から急激に増えていますが、先ほど見た黄金色の死者数の1995年頃からの増加傾向と、40年ほどの開きがあることがお分かりになられますよね?
中皮腫の潜伏期間は、人によってだいぶ巾があるようなのですが、一般的には「平均30~40年」と言われていますので、やや長めのように感じますが、そもそも黄金色の死者数が1995(H7)年からの数字になっていて、このスタート地点ですでに「500人」という数字になっていますので、これ以前のデータも重ね合わせると、ちょうど35年くらいの時差になるのかなぁとも考えられます。☝
そう思って、厚生労働省の「人口動態統計(確定数)」にて、中皮腫による死亡者数のもっと古いデータを探しては見たのですが・・・
・・・残念ながら、見つかりませんでした。😓
おそらくこの中皮腫に関する統計データを取り始めたのが、この1995(H7)年だった・・・、ということですね。
ちょうど、労働安全衛生法「特別化学物質障害予防規則」でアスベスト(石綿)含有率1%規制が出た年ですので、アスベスト(石綿)による健康被害が本格的に問題視され始めた時代だったのかもしれません。
ちなみに、国内では先ほどの厚生労働省の「人口動態統計(確定数)」にて、中皮腫による死亡者数が公表されているだけで、他のアスベスト(石綿)疾患については闇の中・・・ということになっているのが現状です。😒
GBD2019による推計死亡者数について
お次は、別の統計値(?)から、アスベスト(石綿)による健康被害について、見てみようと思います。
筆者も詳しいことまでは把握できていないのですが、GBD(Global Burden of Disease)という、統計ではなく、推計がありまして、日本語でいうと「世界疾病負荷推計」というものです。
数年に一度、米国ワシントン大学のChristopher J L Murrayという方が発表されているようですが、アスベスト疾患に限らず、全般的に「予防可能な疾病による負荷の推計を示すことによって対策を推進させる」という、極めて興味深い目的を持った取り組みになります。👌
GBD2016という推計までは見たことがあったのですが、つい先日に当たる2020(R2)年10/21に更新されてGBD2019が発表されたようですので、ここでは、このGBD2019の推計値を元に、アスベスト(石綿)の健康被害について、見ていきます。👊
※あくまでも推計ですので、実際の数字とは異なります。
まずは、GBD2019データベースより、GBD側でアスベスト(石綿)リスクによる疾病として認識されている、中皮腫、肺がん、卵巣がん、咽頭がん、石綿肺の5つ疾病に着目します。
そこで、アスベスト(石綿)によるリスクを反映させずに、日本国内での(推計)総死亡者数を抽出して、グラフ化してみたのが、以下👇のグラフになります。
1990年から2019年までの29年間で作ってしまったことで、横幅が広くなってしまいましたので、紙面の関係上、縮小表示にしてありますが、クリックすると拡大できますので、拡大してご覧になってみて頂ければと思います。
下から順にA:中皮腫/B:肺がん/C:卵巣がん/D:咽頭がん/E:石綿肺の順に色分けして積み上げられている棒グラフなのですが、例えば直近の2019年(右)の具体的な数字をご紹介しますと、「A:中皮腫:1599、B:肺がん:67160、C:卵巣がん:565、D:咽頭がん:948、E:石綿肺:432」になっていますので、この5疾病で国内で亡くなる方の合計推計が70704人という数字になっています。
逆に1990年(左)の数字を見てみますと、「A:中皮腫:528、B:肺がん:36011、C:卵巣がん:281、D:咽頭がん:886、E:石綿肺:58」となっており、同じく合計推計で見ると、1990年には2019年の約半分の37764人の方々が、日本国内でお亡くなりになられていたという推計結果になっています。
- GBDでは「気管がん・気管支がん・肺がん」がひとつのデータにまとめられてしまっていて、「肺がん」単独の推計がピックアップできないため、「B:肺がん」には「気管がん・気管支がん」の推計も含まれてしまっていますので、予めご了解ください。
- 「A:中皮腫」と「E:石綿肺」について、GBDでは「すべてがアスベスト(石綿)による疾患に該当する」と考えているようですので、これも予めのご了解をお願いできればと思います。
ここ👆では、既述の通り、アスベスト(石綿)リスクは考慮されておりませんので、これに石綿リスクを反映させますと、以下👇のようなグラフになりました。
ここも同様に、2019年と1990年の具体的な推計数をお伝えしますと、2019年は「a:中皮腫:1599、b:肺がん:18342、c:卵巣がん:204、d:咽頭がん:122、e:石綿肺:432」で合計推定死亡者数は20699人、1990年は「a:中皮腫:528、b:肺がん:5365、c:卵巣がん:91、d:咽頭がん:53、e:石綿肺:58」で推定数は6095人です。
どういう統計による推計なのかはよく分からないのですが、先の全体リスクの数字と石綿リスクの数字を見比べますと、例えば2019年の例でみると、推定死亡者数70000人の内の約20000人が・・・、1990年の例でみますと、推定死亡者数37000人の内の約6100人が、アスベスト(石綿)リスクにより亡くなられている、ということが分かります。🤔
※あくまでも推計の話です!
そこで、せっかく細かい数字が出ているので、どの程度の割合になるのかをちゃんと計算してみますと、2019年は29%、1990年は16%ほどになりますので、アスベスト(石綿)による健康被害とGBD側で考えられている、この5疾病で見た場合、全体の死亡者数の内、アスベスト(石綿)リスクにより亡くなられる方が、1990年頃は16%だったのに対し、2019年では29%まで跳ね上がっているということが認識できます。
平たく言えば、アスベスト(石綿)により死亡するリスクが、29年で倍ほどまで高まっている、ということになりますよね。☝
グラフだけだとお伝えにくい点もあるため、具体的な数字も表として整理しましたので、以下👇に掲載します。
※これもクリックで拡大してみてください。
紙面の関係もあるため、ここでは29年間をまともに抽出するのではなく、直近の2019年~1991までの一年おきにして集計してみました。😉
上段半分が、アスベスト(石綿)リスクを考慮していない、国内の推計総死亡者数。
下段半分が、アスベスト(石綿)によるリスクを考慮した数字になりますので、総死亡者数の内、アスベストによって発症してお亡くなりになられた方々の人数の推計となっています。
では、先ほどのように、アスベスト(石綿)によって死亡するリスクがどの程度上がってきているのか・・・、という点について、5疾病の合計数でなく、個々の疾病ごとの数字で見てみようと思います。
前掲の「ご注意と補足」の部分でご説明した「GBDの前提」に従い、A:中皮種とE:石綿肺については同じ数字につき、除外しまして、B~Dの疾病に着目して計算してみます。
※今回は最古が1991年なので合計の数値も改めて確認します。
- B:肺がん :1991年=37595の内5629
→ 約15%
2019年=67160の内18342
→ 約27% - C:卵巣がん:1991年=293の内 94
→ 約32%
2019年=565の内204
→ 約36% - D:咽頭がん:1991年=898の内 54
→ 約 6%
2019年=948の内122
→ 約13% - 推計合計値 :1991年=39395の内6386
→ 約16%
2019年=70705の内20699
→ 約29%
結果、卵巣がんを除いて、概ね2倍程度のパーセンテージになっていますので、やっぱりアスベスト(石綿)による健康被害のリスクは、約30年前の1990年ころと比べると、2倍くらい高まっている、ということになります。
ちなみに、卵巣がんについては4%ほどしかリスクが上がっていないのですが・・・
GBDの根拠となる統計がどんなものなのかが分からないのですが、「長期間に渡って大量に吸い込むと・・・」という前提が正しいとするなら、30年前は現代ほど、共働き家庭は多くはなかったはずですので、男性と比較すると、アスベスト(石綿)工場などで、長期間に渡って大量に吸い込むような働き方をしていた女性の絶対数が男性に比べて少ない・・・という事実に基づく結果なのかな、と思います。🤔
以下は、せっかく作った割には、残念ながら、この話が明確には読み取りにくいグラフなのですが、せっかく作ったので、掲載しておきます。
棒グラフがアスベスト(石綿)リスクを考慮していない、全体リスクでみた国内の推計総死亡者数。
下段にある、あんまり折れていない「折れ線グラフ」が、アスベスト(石綿)リスクを考慮した推計の数字になっています。
なお、話は逸れるのですが、どちらかというと、前章の「アスベスト問題」の方に近い情報になるのですが、GBD2019のデータによると、世界的に見た場合、アスベスト(石綿)による推計の「死亡者数」が、アメリカ、中国に続いて、何と第3位!だそうです。😱
人口数に対する推計の「死亡率」でみると17位のようですので、少し安心はしたのですが、あまりいい結果ではないような気がしますよね・・・ 😞
あとは、先述の通り、アスベスト(石綿)疾病関連の公表のデータとしては、日本国内においては「中皮種」による死亡者数しか公表されていないようなのですが、先ほどのGBDによる推計によれば、アスベスト(石綿)のリスクでお亡くなりになられている方々は、先の5疾病の推計合計ですと、2019年の数値でみると20000人もいらっしゃることになります。
内、中皮種でのGBDによる推計死亡者数が1600人、実際の数値(厚生労働省発表の数値)ですと「1466人」ですので、いずれにしても1500人ほどということになると思うのですが、残りの18500人の死については、アスベスト(石綿)による健康被害による「死」としては、国(日本)では公表されていないことになります。🤨
典型的な理系脳ですし、政治には疎い方ですので、これ以上の詮索は止めておきますが、これが何を意味するのか・・・、この辺りも「アスベスト問題」のひとつに当たるのではないかな、と個人的には思いました。😰
国内のアスベスト(石綿)疾病と世界
この章の冒頭にて、アスベスト(石綿)による健康被害(疾病)の具体例は、1.石綿肺、2.肺がん、3.中皮腫、4.良性石綿胸水、5.びまん性胸膜肥厚など・・・と書きましたが、この辺りについて整理します。
この5つの疾病については、厚生労働省が「石綿との関連が明らかな疾病」として公表していて、労災の認定基準にもなっている疾病名です。
国内では、この労災による救済措置と平行して、「石綿健康被害救済制度」によるものがありますが、ここでも同じ疾病名が挙げられておりますので、冒頭でこの5つをご紹介したわけです。
ちなみに、4.良性石綿胸水については、労災の方では認定基準に入っているのですが、「石綿健康被害救済制度」の方では、「参考」ということで解説などはあるのですが、「治癒する疾患」ということで、給付対象外になっています。👇
・・・が、前項でご紹介した、GBD2019での抽出結果では、C.卵巣がんとD.咽頭がんもアスベスト(石綿)リスクに起因する疾病と考えられていましたし、逆に、4.良性石綿胸水、5.びまん性胸膜肥厚については、GBDの方ではそもそも選択肢が見つかりませんでしたので、辻褄が合いませんし、このギャップは何なのかな・・・という気はしています。
※筆者が勉強不足なだけかも知れないのですが・・・ 😅
ちなみに、ドイツでは「卵巣がん」については、2017年頃から労災認定される疾病のひとつに加えられているようなのですが、咽頭がんとアスベストに関する情報も含めて、WEB上では中々いい情報が見つからず、中途半端な理解のまま止まってしまっている状態です・・・。😞
ただ、呼吸により肺に吸入されたアスベストが、体内の他の器官に廻ってしまう可能性についての記述はいくつかは見られますし、世界的には、咽頭がんも含め、アスベスト(石綿)曝露が大腸がん、胆嚢がんのリスクを高めている旨の研究結果も出てきてはいるようです。
いずれにしろ、GBDでは世界的な視点でデータを収集している訳ですので、きっとこれらの最新の研究結果なども考慮された推計なんだろうとは思います。🤔
健康被害のメカニズム
アスベスト(石綿)が、人体に及ぼす健康被害のメカニズムについて、簡単に触れておきます。
アスベスト(石綿)は、第一弾[アスベスト(石綿)とは?]のこの辺りでもご説明した通り、繊維が非常に細く、直径で0.02-0.35 μm(0.00002~0.00035mm)ほどしかありません。
そのため、周知の通りかと思いますが、空気中に飛散しやすい傾向があります。
空気中に飛散してしまうと、当然、呼吸とともに、否が応でも体内に入ってきてしまうことになるのですが、その細さが故か、体内の細胞に付着し、また沈着しやすい性質のようで、一度入ってくると、なかなか体外には排出されません・・・。
通常、呼吸によって吸い込まれた埃や微粒子のほとんどは、痰に混ざって排出されたり、消化器系に運び込まれて食物と共に排泄物として、排出されるものなのですが、アスベスト(石綿)に限っては、細胞内部へと取り込まれて、基本的に体内に残ってしまうことになります。
アスベスト(石綿)が体内の細胞に付着し沈着すると、免疫系がこれを察知しますので、免疫系の一部を担っている、その中心的仕事をするマクロファージが、免疫システムとして、このアスベスト(石綿)を排除しようと反応し炎症を起こします。
一部は肺からリンパを介して他の器官へ運ばれたりもするのですが、アスベスト(石綿)は繊維自体が非常に強く、変な表現ですが耐久性が高いため、変質することもなく、肺(体)の中に長期間にわたって残留することになってしまいますから、炎症が慢性的に起こっているような状態に陥ってしまうようです。😓
結果、この体内細胞に残ったアスベスト(石綿)繊維が原因となって、肺の線維化や肺がん、中皮腫などの病気を引き起こすことに繋がるようです。
医学的な話になると、完全に専門から外れてしまいます😅ので、この手の詳細については、例えば・・・
独)環境再生保全機構さんサイトのこの辺りや、独)労働者健康安全機構さんサイトのこの辺り、もしくはその他のご専門の各サイトに譲ります。🙏
ちなみに、石綿(アスベスト)をどのくらい吸うと、肺がんや中皮腫を発症することになるのか?については、吸い込んだ量と発病との因果関係は明らかになっているようなのですが、どのくらいの量をどのくらいの期間吸い込めば発症するのか?という点については、残念ながらまだ未解明のようです。😞
また、補足になるのですが、第一弾[アスベスト(石綿)とは?]のこの辺りでも触れました通り、毒性(有害性?)の強い順で並べますと、青石綿:クロシドライト>茶石綿:アモサイト>白石綿:クリソタイルの順になります。🥵
今日のまとめ
今日は、アスベスト(石綿)問題と、専門外に当たりますアスベスト(石綿)による健康被害について、やや個人的な興味に偏りながら、整理して参りました。
国内でのアスベスト(石綿)の輸入量がMAXだったのは、1970(S45)~1990(H2)年頃。
それから輸入量は徐々に下降していき、2006(H18)年にアスベスト(石綿)含有率が0.1%以下に規制されることによって、輸入されることもほぼなくなりました。
その後、2012(H24)年にアスベスト(石綿)が全面禁止になりましたので、今現在は使われていません。
・・・が、2005年に起きたクボタショックで明るみに出てきた、諸々のアスベスト問題とアスベストによる健康被害が、2020年となる今、猛威を振るい始めているような気がしています。😓
これらのアスベスト問題と健康被害が、収束傾向に入るのは、輸入量が下降し始めた1990(H2)年から、肺がんと中皮腫の潜伏期間であるMAX40年を経過する、2030年頃と思われ・・・
さらに、完全な収束を迎えるのは、輸入や使用量が最低限まで規制された2006(H18)年に、この40年をプラスした2045年頃になるものと思います。
まだだいぶ先ですが、過去の遺産に脅かされ続けながら、このまま何の手立てもないまま、これらの問題を抱えていくのではなく、何かしらの解決策が見いだせるといいのにな・・・と思います。😔
アスベストによる健康被害に合われている方々には、この場を借りまして、心からお見舞い申し上げる次第です。
最後までお読み頂き、どうも有難うございました。🙏
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