今日は、2021年5/18朝刊より、アスベスト訴訟(石綿訴訟)に関する最高裁の総合的な判決がようやく出た!というお話です。
ずいぶん掛かりましたが、いい結果が出てよかったです!😘
一部、大阪・京都訴訟で争われた、屋外作業で健康被害を負った一部の方は、救済対象から外されてしまったようですので、手放しで喜べるものでもないようですが・・・
アスベスト(石綿)についてのおさらい
まず、アスベスト(石綿)とは?という件について詳しくは、こちら👉「第一弾:アスベスト(石綿)とは?」をご参照ただきたいのですが、大量に長期間吸い続けることで、健康被害が生じてしまうことは周知の通りかと思います。
石綿(アスベスト)の輸入量は1974年にピークを迎え、その後は具体的な規制が始まりますが、含有重量比率を0.1%以下にする規制が敷かれたのが2006年でした。
一般的には完全なアスベスト規制は、この2006年と言われていますが、この2006年の規制は99.9%規制にすぎません。
その後、2012年に石綿0.1wt%超の製品製造に係る禁止猶予が撤廃されますので、筆者の認識だと、事実上の100%規制は2012年です。
詳しくはこちら👉「アスベスト規制年表」。
その他、当サイト内のアスベスト(石綿)関連記事は、後半に目次コーナーがありますので、参考にしてください。👍
その期間に建設作業に携わった方々の健康被害が、今まさにピークを迎えているのですが、この時差については、「アスベスト問題と健康被害」のこの辺りでも詳述していますが、アスベスト(石綿)疾病の発症までの潜伏期間によるものでした。😕
この👆図の通り、特に肺がんと中皮腫の潜伏期間が長く、20~40年と見て、石綿(アスベスト)の輸入量👇と見比べた場合・・・
最大輸入量を記録した1974年のピークから、減少に転じるのが1990年ですので、健康被害のピークが「まさに今」であることがお分かりになられると思います。😞
将来的な目で見ますと、この石綿(アスベスト)による健康被害は、単純計算で考えた場合、このまま横ばいが続いて、2030年頃を期に減少に転じ・・・
このグラフ👆より、輸入量がゼロになったのが2006年だとしますと、2046年頃までは健康被害はなくならないことになります。🤨
アスベスト訴訟(石綿訴訟)とは?
初めてお立ち寄り頂いた方にも、おおむねの経緯はご理解頂けたと思いますので、次にアスベスト訴訟(石綿訴訟)とは?という点に入ります。😉
前項のような経緯で、過去にアスベスト(石綿)を体内に吸い込んだことで、健康被害を負うことになった、(主に)建設作業員やその遺族の方々、約1200人によって、国と建材メーカーの責任を求める、全国的な33件の訴訟を総称して、「アスベスト訴訟(石綿訴訟)」と呼ばれています。
その「アスベスト訴訟(石綿訴訟)」の内、今回の四つの訴訟の原告は500人ほどです。
ですので、残りの29訴訟、700人余りについては判決が出ていないことになるのですが、今回の最高裁判決を期に、基準が整えられて、和解が進むことが期待されています。🙂
アスベスト(石綿)による健康被害については、こちら👉「第二弾:アスベスト問題と健康被害」をご参照ください。
アスベスト訴訟(石綿訴訟)の経緯
1960年頃からその危険性が認識されはじめていたのにもかかわらず、国としては断熱材などに使うよう推進しており、先ほども触れました通り、その14年後の1974年にはアスベスト(石綿)の輸入量のピークを迎えています。
1970年には、WHO(世界保健機関)やILO(国際労働機関)が発がん性を指摘しています。
アスベスト(石綿)規制について詳しくは、こちら👉「アスベスト規制年表」。
1975年には、含有量5%規制として具体的な法規制が始まります。
その後、色んな法律での規制が複雑になっていきまして、2005(H17)年の「クボタショック」を受け、2006(H18)年にさらに各法規制が厳しくなります。
※この👆クボタショックはWikipediaさんページです。
この頃から徐々に、石綿(アスベスト)関連の訴訟が出てきているようで、朝日新聞さんによると、全国に先駆けて行われた提訴は、東京地裁、横浜地裁へ2008(H20)年に出された提訴だそうです。
※事実関係の裏付けはまだ取っていません。
2012(H24)年、横浜地裁での訴訟は原告側の完全敗訴。
同じ年に、東京地裁では、労働安全衛生法に規定される「労働者」にのみ、国の責任が認められますが、「一人親方」と呼ばれる個人事業主には認められていません。
前投稿「アスベスト訴訟、国の賠償責任が確定!」のこの辺りでもお話ししていますが、2012~2017年の間に出た一審の判決7件においては、どのケースも「一人親方」に対する国の責任は認められていません。
建材メーカーの責任を初めて認めたのが、2016(H28)年の京都地裁での判決。
その後、2018(H30)年に東京高裁で初めて「一人親方」に対する国の責任が認められる判決が出ます。
2020(R02)年、これはあまりに喜ばしい記事でしたので、前投稿「アスベスト訴訟、国の賠償責任が確定!」でお話ししたモノですが、先の2018(H30)年に東京高裁で出された判決を不服とする国からの上告を、最高裁は受理しませんでしたので・・・
最終的に「一人親方」に対する国の責任が認定されたことになりました。🙌
この時、建材メーカーの賠償責任を否定した、一審と二審判決を不服とする、原告(被害者)サイドからの上告については受理されています。
今年(2021(R03)年)に入ってから、一部の建材メーカーから出ていた、不服とする上告を、最高裁がまたしても不受理。😙
その結果、建材メーカーの共同不法行為も最終的に認められた形になりました。
今回のアスベスト訴訟に係る最高裁判決の概要
今回の判決は、100点満点とは言えないまでも、原告サイドの方々にとっては、非常に大きな第一歩になったものと思います。🙂
司法も専門外ですので、細かい部分は割愛させて頂きますが、今回の判決の内容をザッとまとめておきます。
判決1:国の責任と問える時期
- 国の違法性
労働者の生命や身体への危害を防止して、健康を確保することを目的とした労働安全衛生法の主旨を鑑み、屋内作業でのマスク着用などを義務付けるなどの権限を行使すべきところで、この規制を怠ったことが違法とされました。(国家賠償法1条1項) - 賠償責任を問える時期
危険性を認識できた時期の1975年10/1 から
「原則禁止」が施行される前日の2004年9/30 まで、とされました。
時期については、落し処としては、まぁそうか・・という感じではなるものの、1970年には、WHO(世界保健機関)やILO(国際労働機関)が発がん性を指摘しているはずですので、国が「危険性を認識できた」のは、個人的には1970年になるべきのような気がしますが・・。🤨
判決2:一人親方に対して認められるか?
この問題は、私情は抜きして客観的に見ても「おかしな理屈だな・・😩」と思っていましたので、個人的にもスッキリしました。
当たり前の話だと思うのですが・・・
労働安全衛生法による保護対象の労働者でなくとも、快適な職場環境を作る法の主旨を踏まえ、一人親方に対しても、国の賠償責任があると認定されました。
人体への影響は、法的な定義による「労働者」であるか否かで変わらない、との理由だったようです。
ごもっともな判決だと思います。🤔
判決3:建材メーカーの責任を問えるか?
健康被害の直接的な原因と、具体的な建材が結びつかない場合に、製造メーカーの責任が問えるか?という問題です。
これはちょっと難しい判決のような気がしますが、人道的には問えて当たり前。😤
・・・ですが、建設作業と考えると、各現場ごとで使用する建材も違いますので、個人的には理屈の積み上げがそうそう上手くはいかないのではないかな・・という気がしていました。😓
判決としては、健康被害に繋がる建材の特定ができなくても、販売時期・地域と作業実績の関係、市場のシェア率から「被告メーカーの建材が現場に到達したと推認できる」と指摘し、これを理由に、警告表示を怠った違法性を問えると認められました。
杓子定規だけでなく、人道的かつ合理的な判決ですね。😊
判決4:屋外作業員は救済されない?
京都訴訟・大阪訴訟については、屋外で作業をした一部の人に対しては、当時は危険性を認識できなかったとして、救済対象から外されてしまった、とのこと。🤨
そもそも、危険性を認識できなかったからと言って、責任を回避できるものではないのではないでしょうか?
筆者の筋の方がおかしいかな??🙄
国の責任だけならまだ何となくイメージができますが、建材メーカーの方の責任についてはそういう問題じゃないですよね・・・ 😒
実際に石綿(アスベスト)による健康被害が出てるわけですから。
今後の好転に期待するしかありません。😟
今回の最高裁判決その他
- 神奈川・東京・大阪の三訴訟については、両高裁に審理を差し戻したとのこと。
- 神奈川訴訟において、一人親方に対する国の責任を否定した部分を見直しさせることになったとのこと。
- 大阪訴訟についても救済対象となる人を増やして、賠償額を再計算させることとなったそうです。
当サイト内のアスベスト(石綿)記事の目次
当サイト内の石綿(アスベスト)関連記事の目次です。
アスベスト(石綿)とは?という基本知識から、色んな法律が入り組み合ってしまっていることで、紛らわしくなっている法規制などについても、(それなりに)認識しやすく整理してあるつもりです。😑
必要に応じて、参考にして頂ければと思います。😌
- 第一弾:アスベスト(石綿)とは?
- 第二弾:アスベスト問題と健康被害
- 第三弾:アスベストに係る法律とレベル区分
- 第四弾:アスベスト規制の推移と含有建材
- 第五弾:欠番 ←まだ執筆中です
- 新聞ネタ①:今頃、アスベスト含有製品🤨?
- 新聞ネタ②:アスベスト訴訟、国の賠償責任が確定!
- 新聞ネタ③:ニトリさんもアスベスト含有製品?
- 新聞ネタ③:石綿訴訟、最高裁で初の総合的判決!👈今回
6~8については、たまたま目に止まった石綿(アスベスト)関連の新聞記事について、建築士として個人的に思ったことや調べ上げた内容等を、ツラツラと綴った記事になります。😅
そう言えば、記事としてはまとめていないのですが、昨年(2020年)末には、ヤマダ電機さんでも、アスベスト(石綿)含有製品が見つかった!という記事が、出ていましたね。😲
今日のまとめ
今日は、2021年5/18の朝刊に出ていた、石綿訴訟(アスベスト訴訟)に係る最高裁判決の記事について、個人的に思ったことを綴りつつ、皆さんにもご認識頂けるよう、過去の経緯なども含めて、今回の判決結果について整理して参りました。
こんなWEB上のひとコマで独り言を綴ることしかできず、心苦しい限りではありますが、建設にも携わる一建築士として、今後の動向にも注意していきたいと思います。
なお、昨年12月の判決に引続きまして、今回の最高裁の総合的な判決も100点満点ではないとしても、少なくとも前向きなモノではあったはずです。😉
この判決が、現在争われている残29件の集団訴訟も含めて、今後のすべての石綿訴訟(アスベスト訴訟)の前向きな判決と健康被害に苦しまれている方々やご家族の方々の迅速な救済へと繋がっていくことを、陰ながら期待しています。
本日は、お立ち寄り頂きまして、どうも有難うございました。🙏
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